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第5回 配達確認ができるインターネットを利用した書類送付システム

つい先頃、POSTAと呼ばれるインターネットを利用したドキュメント・デリバリシステムの提供を開始した。いささか、コマーシャルめいて読者諸兄には申し訳ない気もするが、なぜこのようなシステムに取組んだかは、私のテーマと密接に関連しているため、このコラムを利用し説明させて戴きたい。

ドキュメント・デリバリシステムとは、文字通り書類(ドキュメント)を送付(デリバリ)するためのシステムである。厳密に言えば、今日のネットワーク時代にふさわしく、インターネットを使って(電子化された)ドキュメントを受信者に届ける仕組みである。

本コラムの読者であれば、「なんだ、電子メイルのアタッチファイルじゃないか!」と思われるであろう。送信者側がその意志に従って、電子化された文書を、受信者を特定して送り届けるという点に着目すれば、アタッチファイルと何ら差異はないとも言える。

ところが、ここで幾つか考えて戴きたいことがある。いささか唐突だが、郵便制度を見て戴きたい。今日の郵便制度では、単純に葉書や封書などの郵便に加えて、書留や配達期日指定、また内容証明や配達証明などさまざまな送達の仕組み用意され利用されている。 契約書や請求書、時には現金そのものを送付するに際して、これらの仕組みが用途に応じて使い分けられ利用されている。しかし、電子メイルのアタッチ機構には、これらの仕組みに対応した分化がなされてはいない。単純に、受信者がその文書を確かに受信したのかどうかすら確認するすべが存在しない。

ここに、ドキュメント・デリバリとアタッチファイル方式との大きな差の一つがある。ドキュメント・デリバリシステムには、送信者側において、受信者がその文書を確かに受信したのかどうかの確認する機構が用意されている必要がある。郵便で言えば、配達証明郵便である。

これまでこの種の配達確認機構が存在しないことにより、インターネットの社会機構的な利用が大きく阻害されてきたと考える。良く口にされる「インターネットを利用したディジタルコンテンツの市場形成」すら事実上存在せず、インターネット上の情報利用はタダとするのがこれまでの常識とされてきた。昨今、話題となりつつあるプッシュ型のニューズ提供や、情報サービス提供においても、受信者はコンテンツ(内容)に対して課金される訳ではなく、その運営は、スポンサーによるホットバナーなどを利用した広告料によってまかなわれてきたのが現実と言える。

単純に言えば、インターネット上においては、情報そのものの価値を前提においた市場(売買)は形成されていなかった訳である。
一つの見方をすれば、「情報はタダとすべき」と言う主張もあろう。しかしながら、価値ある情報を提供する人が、その価値に応じた対価を得られないとすれば、本当に重要な情報をネットワーク上で交換し得る仕組みが成立するであろうか?言い換えれば、価値ある情報を提供する人が、応分の報酬を得ることにより、本来の意味でのネットワーク上での情報交換の価値が高まると言えよう。

今日、書籍は「価格」をつけて書店の店頭に並んでいる。少ない読者層を対象とする本は高く、一般の読者を対象としたものは、比較的やすい価格がつけられている。インターネットにおいても、提供する情報の価値に応じた市場メカニズムが形成される必要があると考えるべきであろう。ドキュメント・デリバリは、インターネット上における情報市場を形成する基礎をつくると考える次第である。

さらに、ドキュメント・デリバリ機構は、インターネットの利用をさまざまに高度化していく期待ができる。例えば、社内便である。今日、世界各地に支店や営業所を持つ日本企業は多い。遠隔地の営業拠点に急いで情報を送る場合に、これまでテレックスや、ファクシミリに加えて電子メイルが使われるようになってきた。しかし、例えば給与辞令や人事に関わる情報をこのような手段で送ることができようか?仮に、これらの書類がワープロで作成されたものであったとしても、電子情報で送るのではなく、一旦紙に出力し、封筒に入れて、郵便または社内便で運ぶのがこれまでの機構であったと言えよう。極端な場合は、情報を受けた側が自分のコンピュータに再入力することなどが発生していたのが現実である。相手を特定して、しかも道中において誰にも盗み見されたり、改ざんされたりしない機構があれば、本社機構のある部門が作成したワープロ文書を直接に遠隔地に送信することが可能となるはずである。

また、極めて身近な例としては、「請求書」と言う文書がある。請求書を自ら取りに行く奇特な人は世の中に存在しないであろう。WEBは、明らかにプル型(情報を受信者が取りに行く)ことを前提においた機構であり、請求書や指示書などの送信者側が、その意志に従って発信する仕組みとしては利用しにくい。すなわち、プッシュ型でしかも、相手を特定して機密を守りながら送達する仕組みが必要とされる。その外、インターネットの上で、ディジタル出版を考える人もあろう。

すなわち、ドキュメント・デリバリ機構は、従来のインターネットを取り巻く常識を大きく変えて、コンテンツの価値に対応した流通市場を形成したり、電子媒体そのものに会計処理上の監査証拠としての役割を与えるなど、ネットワークに新しい社会基盤としての役割を与えるきっかけとなると期待するものである。



執筆  菊田昌弘(前代表取締役)



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